Back to LCJ homeYour PageContact English TreeEnglish Tree Company PolicyVisit our English School Site


 

今回は、偶然上司とトイレで顔をあわせたために転勤が決まってしまったのだ、と思っている彼が、なぜよりによってトイレで顔をあわせてしまう事になったのか・・を語ってくれました。笑えるような、でもちょっと同情したくなるようなちょっぴりかわいそうなエッセイです。ユーモアセンス一杯のアメリカ人読者、ジョンさんが送ってくださいました。

ジョンはずっと動けずにいた。このトイレの中からも・・そして今の人生からも・・自分で想像していた以上に、この日本の会社に長い間居座っているのだ。その理由には借金があるのと、家族への義務を果たすという事なのだが、それが彼の故郷、アメリカ、ネブラスカ州のオマハへ帰ることを遠のかせていた。彼はいつまでのたっても先のない、光の見えないトンネルの中にいるようで、かなりストレスが溜まっていた。おまけにとんでもない病にもかかってしまったことが発覚したのだ。

否定する事も出来ない、診断書を手渡されたのだ。
そして、そこから彼の便秘との戦いが始まったのだ。

病院に行き、日本人ドクターに診察してもらう事にしたのだった。こんな事を自分自身が経験するなんて、絶対にないと思っていた。こういう病気は自分がかかるのではなく、誰か他の人がなった、というのを聞いたりするだけのもの・・自分がまさか、こんな病気になるなんて夢にも思っていなかったのだ。しかし、否定する事も出来ない、診断書を手渡されたのだ。そして、そこから彼の便秘との戦いは始まったのだ。
彼の奥さんはドクターが、彼の中に溜まっているものと、ガスについての、彼の病状を説明するとき一緒に立ち会っていた。今まで苛立ち、怒り、そしてこんな病気であるはずがないと、否定したかったが、事実が分かり今度は落ち込んでしまったボクを妻は、いつも支えてくれていた。そして今、彼女は強い精神力で彼に思いっきりぶんばるようにボクをサポートするつもりだった。

困惑した表情の佐藤さんはそのままトイレを後にした。
きっとそのとき、6階のフロア全てが困惑していたに違いない。

今、ボクはオフィスで沢山の仕事を終え、もうひとつの恐怖の仕事に取り掛かろうと、トイレに向かった。ようやく事が済んで、トイレのドアを開けて外に出ると、そこにはなんとボクの上司の佐藤さんがいるではないか!佐藤さんは、、血走ったような目と困惑した表情で、「ジョンさん・・調子は・・どど・・どうかね?」と口をシャツの袖口で覆って、こもった小さな声で聞いた。「あっ・・は、はい、大丈夫です。かっか風邪はひいてはいませんが・・」とへんな答えを言うのが精一杯だった。困惑した表情の佐藤さんはそのままトイレを後にした。きっとそのとき、6階のフロア全ての人が困惑していたに違いない。

診断を受けてから、彼は毎日恐ろしいほどの量の繊維物を食べるようになった。さらにすごい量のふすままで食べるようになったのだ。何でもいいので、努力して“あれ”を大量に外に出さねばいつの日か、彼の体の中で爆発したり、あふれ出るのではないかと心配だった。おかげで、ふすまの成果はすごいものだった。一日に2度も3度もトイレに急に駆け込むようになったのは、自分でも不思議だった。今までほとんど会社のトイレなど行ったことがなかったのだから。なにしろ何度も爆弾を流しにいかなければならなかったのだから。しかし幸いにも社内で、実際に爆弾を経験している、年よりはあまり多くなかったように思う。僕の爆弾は、その爆弾ではない爆弾だが・・
ある日の夕食の席で、彼は奥さんに彼の会社での悩みを相談した。そう、あの日、上司の佐藤さんの困惑した表情の事を。彼は、もし奥さんが佐藤さんに、日本語で(奥さんは日本人)理由をクリアに説明してくれたら、きっと佐藤さんも理解してくれ、変に思わないのではないかと。あれからなんだか、佐藤さんのボクを見る目が、どうも違うように感じてもいたのだ。彼は佐藤さんに全部説明して欲しかったのだ。彼の苦しみと、葛藤、そしてふすまの素晴らしさ、ふすまがどんな勢力を現してくれているかと。でも、奥さんは反対したのだ、「そんなのダメよ。日本のスタイルじゃないわ!こういうときは、何も言わないほうが一番いいのよ。」と。

それからすぐに、電話が鳴ったのだ。上司の佐藤さんだった。しばらく彼と話したジョンは電話切った。そして、奥さんにこう言ったのだ。「アメリカのネブラスカ州に新しい支社を作るので、佐藤さんがボクにそこに転勤するように、いま指示が出たよ。すぐに行っていいそうだ・・おまけに佐藤さんは、転勤祝いに、最新式の“ウオシュレット”をプレゼントしてくれるらしい。そして新しい旅立ちのスタートとして、これから毎日快適に“家で”すっきりしてから会社に行けるように取り計らってくれたそうだ!」しばらく転勤の本当の理由を考え、すこし複雑な気持ちになったが、まあ、いいとしよう。「ハニー、ボクを見ててね!ボクはやるよ!新しい人生で思いっきり仕事も、体の中からもスプラッシュ!してやる!!